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研究者インタビュー

ゲーム研究者インタビュー

泰羅 雅登教授インタビュー【第2回】

テレビゲームへの正しい理解を~ゲーム研究者インタビュー

泰羅 雅登教授インタビュー

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泰羅 雅登(たいら・まさと)

日本大学大学院総合科学研究科教授

1981年東京医科歯科大学 歯学部卒業。1985年東京医科歯科大学 大学院 歯学研究科修了。日本大学医学部助手、講師、専任講師、助教授、教授を経て、2005年より日本大学大学院総合科学研究科教授。神経生理学および認知科学を専門分野とし、現在は三次元視覚情報処理の神経メカニズムの解明 (KEYWORD:頭頂連合野 , 機能的MRI)、頭頂連合野における三次元形能認知の神経メカニズムに関する研究 (KEYWORD:三次元物体 , 認知 , 頭頂連合野)、頭頂連合野における視覚性運動制御の神経メカニズムに関する研究 (KEYWORD:視覚 , 運動制御 , 頭頂連合野)、fMRI PETによる運動制御、視覚認知メカニズムに関する研究 (KEYWORD:fMRI,PET,視覚性運動制御)を研究課題としている。脳を鍛えて頭を良くする―仕組みがわかれば実力は伸びる(ライオン社)等、著作多数。

第2回"ハマる"状態に陥らないよう、コントロールする必要性

2009年1月13日掲載

ゲームのせいではなく、コントロールしてやらなかった親の責任?

――そう考えると、ゲームを親子のコミュニケーションツールとして利用するということも可能になりますね。

泰羅:それはとっても大きいと思います。『脳トレ』なんかは、そういうところでうまくいったんでしょうね。幅広い年齢層が楽しめるようになって、一種の「コミュニケーションツール」として使えるようになりましたから。Wiiもたぶんそうですね。それはとってもいいことだと思います。

――現代では、親がすでに第一次ゲーム世代ですよね。そうなると子どもに逃げ道は無くなる気もしますが。

泰羅:子どもって賢いから、親がハマッてるのを見たら「こりゃいかんな」って思うんじゃないですか(笑)? 「親と一緒にハマる」というケースもあるけれど、親がゲームばっかりやってて家のことやってくれなくなったら、たいていの子どもは「こりゃまずいぞ」って思いますよ(笑)。「お母さんはゲームにハマッてしまって、ご飯も作ってくれない。お父さんと喧嘩ばっかりしてる」って思ったら、自分はゲームから離れるだろうし。反面教師ですよね。

でも、親とゲームができるとしたら、それはコミュニケーションツールになるわけですから、とっても重要なポイントですね。そこに解決の糸口があると思います。だいいち、「時間を取られる」というのはゲームに限ったことではないですしねぇ。「本ばかり読んで引きこもっている」「音楽ばっかり聴いてて引きこもっている」のもそれぞれまずいですから。詰まるところ、「一つのことだけに気を取られてしまうのはまずいだろう」ということで、大切なのは「バランス」です。

――逆から見れば、「バランス」さえ保てるならゲームともうまく共存していけるということですね?

泰羅:そう思いますね。親御さんとしては取り上げるのが楽でしょうけど、「うちの子がこんなになったのはゲームのせいだ」っていうのは逆だと思うんです。「ゲームのせい」じゃなくって、「ゲームを与える際にちゃんとコントロールしてやらなかった親御さんのせい」なんですよね。最初のころは手探りの状況で、「親御さんもわからなかった」ということだと思うんです。

――ゲームが浸透しているにも関わらず、まだ誤解が解けていない部分があると思うので、あえてお聞きします。「犯罪に結びつきそうなゲームのカテゴリー」というものはあるんでしょうか?

泰羅:興奮しやすいゲームをやり終えたあとは、やはり興奮状態になる。それは間違いないです。そういうことを言うとすぐに「お、そうか。それはまずい」っていう話になるんだけど、「でも、ちょっと考えてみてくださいよ」って言いたいんです。昔ね、高倉健さんの映画を観たあと、みんな肩で風切って映画館から出てきたでしょう(笑)。それと同じなんです。映画は一回こっきりだけどゲームは毎日だから、その違いはあるにしても。連続して続いたときに果たしてどうなるかに関しては、まだちゃんとした研究結果はないんですが。

それから、ゲームって「リセットできてしまう」じゃないですか。それもゲームの悪いところのひとつだろうとは思うんです。人間社会ではいろんな局面で嫌なこともいっぱいあるんだけども、人とのつきあいはそうそう簡単にリセットなんかできない。すると乖離が生じて、困惑が生じてくる可能性は充分にあります。だから、そこをうまくコントロールしてやる必要はある。でも、それも「長時間のめり込むっていうことがいちばん大きな要因」であって、「つきあい方のコントロールさえしてやれば防げる」だろうと思います。ただ、それに対するちゃんとした研究っていうのは、残念ながらまだないというのが現実です。

――その研究が今後なされる可能性は?

泰羅:それは難しいんですよ。たとえば「小学生を対象にして長期間見ていく」としますよね。そんなとき、「こっちのグループにはゲームをやらせておいてこっちのグループにはゲームをやらせません」なんて、そんな人体実験みたいなことはできないじゃないですか。みんな家庭の環境も違うし、ひとりふたりの子どもさんから得たデータを、一般的に当てはめることもできない。だからそういう研究は、ものすごく難しいんです。各年代ごとに性格検査をして、その子たちがどういう経験を持っているかを洗い出していって、積み重ねるしかないんですけども、相当大規模な研究になるので、ある程度の予算をつけてがっちりやらないと難しいと思いますね。

――誤解はなかなか解けませんね。ましてや"煽るマスコミ"もいますし。先生ご自身も、そこでストレスを感じることも多いのでは?

泰羅:でも最近のマスコミは、以前に比べればずいぶん公平になってきていると思いますよ。たとえば「凶悪事件がゲームの影響だ」っていう意見が出てきた時に、ちゃんと反対意見も載せてくれるようになりましたし。風潮としては、「ゲームとのつきあい方の方が大切なんじゃないの?」っていう書き方をするケースが多くなってきている気がしますね。