研究者インタビュー
テレビゲームへの正しい理解を
星 幸広先生インタビュー
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千葉大学 大学院教育研究科講師
星 幸広(ほし ゆきひろ)
1944年福島県南会津町生まれ。1963年千葉県警察官となる。警察大学卒業後、千葉県鉄道警察隊長、警察庁警備局(総理大臣警護責任者)、千葉県少年課長、千葉県大原警察署長、千葉南警察署長、地域部参事官等を歴任し、2002年退官。現在、千葉大学大学院教育研究科講師。千葉市スクールガードアドバイザー、千葉市防犯アドバイザー、東京都墨田区「学校法律問題解決支援協議会」専門委員。「子育て・しつけ」や「学校危機管理」に関する講演を全国的に行っている。著書に「実践 学校危機管理ー現場対応マニュアル」「子育ての鉄則」。
第3回「子育ての在り方を教える場」が現在の親には必要。
2010年11月01日掲載
- ――学校の先生たちと協力してゲームの啓発はできないでしょうか。CESAでは生徒さんにゲームに対する啓発もおこなっていますが、もう少し広がっていくような啓発活動ができないかなと考えています。
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星:学校での啓発活動は非常に難しいですね。とくに先生方はゲームや携帯電話に対してものすごく拒否反応を持っています。中にはゲームや携帯電話は悪と決め付けている人も多いです。これはある意味では仕方のないことなのです。子供が学校に携帯を持ってきたのを先生が預かって故障した場合、親から「弁償しろ」などと要求されるトラブルが結構多いのです。
家庭、学校、地域がスクラムを組んでひとつになって子供を育てて行くことが本来の姿であり、ゲームや携帯電話もそういった中で正しい使い方や勉強会などを行っていくのが理想なんですが、なかなか現在の状況では難しいです。
何度も言いますが、ゲームや携帯電話は悪くないのです。正しい使い方や指導ができない親が問題なんです。学校の生活指導でも今やゲームや携帯電話は避けて通れない大きな問題なのです。
文明が進んでいけば新しい便利なツールが次々に誕生します。そのツールの悪い面だけを取り上げて禁止というのでは、子供たちは現代生活に取り残されていくだけです。それよりもその度にキチッと子供に指導できるような環境を作ることが必要なんです。親、とくに親に良い面と悪い面を教えていかないと、子供も健全な生活を送ることができません。
- ――まず親の子育ての在り方を考え直すことがたいせつなのですね。
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星:そうです。親が子供のご機嫌伺いをしてはいけません。とくに最近の親は子供を甘やかせています。躾ができていない子供が増えています。親が子供に厳しく注意しないから、子供たちは悪いと思ってないのです。そうやって躾を受けずに育った子供が大人になり、今度は子供を生み育てることになる。どうなっていくのでしょう?
やはりここで、「親学」をもう一度学ばせることが必要なのではないでしょうか。子育てのあり方や学校との関り方など、親御さんが普段聞くことができないことなどを学ぶ場があれば、子育てにきっと役に立つと思います。
子供は、育てたいようにはなかなか育ちません。「育てたように育つ」ものです。黙ってみていれば自然に育つものを、親が変にいじくり回しかえってダメにしていることも多いのです。子供は親が考えているよりも、はるかに正しく伸びる力を持っていると思います。それを親が「これはいけない」「あれもいけない」「どうしてこんなこともできないの」と焦るあまり、せっついて子供をつつき回してしまう。これでいじけてしまい、何もできないダメな子になってしまったケースも多く見られます。
最近の親御さんの子育て相談を受けていると、悲観論ばかり言う方が結構いらっしゃいます。これでは、子供に良い影響があるはずがありません。
ゲームでも同じですが、まずは親御さんも良い面を知ることを始めてください。そして、約束したことは子供たちに守らせる。怒るのではなく、叱る。そうした教育も必要なのです。
親は楽しみながら子育てをしなければなりません。何より子供にとって大切なのは親の笑顔と温かいほめ言葉なのです。