研究者インタビュー
テレビゲームへの正しい理解を
後藤 弘子先生インタビュー
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千葉大学 大学院専門法務研究科教授
後藤 弘子(ごとう ひろこ)
千葉大学大学院専門法務研究科教授。1958年福島県生まれ。1987年慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得。立教大学法学部助手。富士短期大学・東京富士大学経営学部助教授を経て、2004年4月より現職。専門は刑事法。著作に「ビギナーズ少年法」「犯罪被害者と少年法」「少年非行と子どもたち」「少年犯罪と少年法」など。特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)理事を務める。
第2回親がゲームをしたことがないと、何か犯罪があった時に不安を覚える
2011年06月20日掲載
- ――「ゲームと子どもとの関わりあい方」についてどう思われますか。
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後藤:子どもとゲームとの関係でこれまで社会が問題としていたのは、「子どもがバイオレントなゲームを参考にして犯罪することへの危惧」だと言えます。「社会で注目を浴びるような凶悪な少年犯罪が起きると、その子がゲームを模倣したのではないか」と思われるのです。しかしよく考えてみると、最近の子どもでゲームをしていない子を探す方が難しいぐらい、誰でもゲームをしています。したがって、「凶悪な青少年犯罪者がそのままゲーム好きか」といわれれば、それは違うのではないかと思います。
もうひとつは、「ゲームのわかりにくさ」があります。ゲームはやっていかないと全体像がつかめないし、例えば親が、子どものプレイしているゲームをたまに覗いてみても理解できないですね。そして何か事件が起きた時に、「そのわかりにくさから不安を覚えてしまう」ということもあるでしょう。
人は、「わからないこと」に不安を覚えます。少年犯罪もなぜ起きたかわからない。そこが社会を不安にします。その不安を解消するために、わかりやすい理屈を探すことになる。そのターゲットになりやすいのがゲームです。「ゲームをしているから犯罪を行った」ということになれば、自分の犯罪への影響を考えないですむようになる。少年犯罪の場合、原因は社会や家庭、学校にあるのですが、ゲームのせいにすることで、それを意識しないですむのです。最近のゲームは画像が鮮明で、とてもリアリティがありますので、よけいゲームを問題としやすくなっている気がします。
- ――東京都の「青少年の健全な育成に関する条例」をどう思いますか。
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後藤:家庭用ゲームについてはあまり心配していません。国家や地方自治体が強制的に介入し、規制をかけることは表現の自由の視点から言ってもできるだけ避けなければなりません。家庭用ゲームについて、外部からの規制が激しかったのは6年ぐらい前でしたね。神奈川県が「殺人・暴力など残虐シーンを多く含む家庭用ゲームソフト」について、青少年保護育成条例により「有害図書」の指定をしました。しかし、家庭用ゲーム業界は早くからCEROがほとんどの作品についてレーティングを行っていますし、既に「Z区分」タイトルなどは、青少年に対して売るときに自主規制をかけているので、今回はあまり問題はないと思います。特に今回の場合は「性的な表現に対しての規制」が一つの目的であり、そうした面では家庭用ゲーム業界は昔からとくに厳しく自主規制を行ってきたので問題はないでしょうね。
テレビ業界ではBPO(放送倫理・番組向上機構)が国家が規制をはじめる前に自らが規制を行う目的で作られ、映画は映倫(映画倫理委員会)が審査を行ってきました。このように、業界自らが青少年に対するネガティブな影響を排除するように誕生したのです。そして、家庭用ゲーム業界はCERO(特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構)をつくってレーティングを行ってきました。こうした取り組みが効果をあげているのではないかと思っています。